vol.32 1年に1度の懐かしい味。大正屋のかき氷
葉山に暮らす人たちが、心待ちにしている夏の名物がある。
それは、大正屋さんのかき氷。
最近のお洒落なふわふわの氷ではなくて、がりがりっ!とした懐かしいかき氷。
梅雨が明けて空に真夏の太陽が照り出すと、
「今年はいつ開くのかな?」と、皆がそわそわとし始める。
秋からずっと閉まったままだったシャッターが開いて、店先に「氷」の吊旗がはためくと、大人も子供も「やったー!今年も開いたよ、大正屋さん!」と小躍りをする。
少し前まではサスペンダーが似合うおじいちゃんと、やわらかくて穏やかなおばあちゃんが二人で切り盛りする氷屋さんだった。ここ数年、お年をめしてお店を開くことが難しくなってきた。
葉山の誰しもが「どうなっちゃうのかな。もうあの懐かしいかき氷が食べられないのかな・・・」と心配していた。
ある夜、突然若い男の人が、閉められたシャッターに大きな「アラレちゃん」の絵と「大正屋」の文字のグラフィティアートを描いていて、なんだろう?どうなっちゃうのかな?と心配していたら、その夏からお孫さんだというその人がお店を切り盛りし始めた。
ちょっとぶっきらぼうで、話しかけるのをためらってしまうくらい、クールな面持ちで、もくもくと氷を削っている。でも、良く見ていると小さな子供にはちょっとシロップを多目にしてあげていたりする。
お孫さんが切り盛りする様になってから、ちょっと不安な気持ちもありつつ、久しぶりに大正屋さんのかき氷を食べに行ったら、ほんの少しだけ氷が細かくなっていたけど、おんなじ味のやさしい餡子がのっていた。いつもおばあちゃんが炊いていた、あの餡子。
おばあちゃんから教わって、今ではそのお孫さんが毎朝作っているそうだ。こんなにクールな顔してこんなにやさしい味の餡子が炊けるなんて、なんだかずるい。
思い切って「今度ブログでご紹介しても良いですか?」と話しかけてみたら、表情も変えずにちらっと私の方を見て、「何て書くんですか?」と一言。
珍しくすっごく緊張してしまい、とにかくこれだ!と思った言葉が口から出た。
「地元の人が毎年とても楽しみにしているかき氷屋さん、って紹介したいんです!」
そうしたら嬉しそうにはにかんで、「よろしくお願いします。」と、ぺこんと頭を下げて、私が注文をした宇治抹茶金時を手渡してくれた。
いまどき流行りのかき氷屋さんももちろん魅力的だけど、こんなに素敵な氷屋さんがある葉山は、やっぱりいい町だ。
Enjoy very authentic style of shave ice made by cool guy.
nahoko,
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大正屋
240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内373
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「暮らすように滞在する」五感で楽しむ葉山
The Canvas Hayama Park
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