Vol.81 ~春のごちそう~葉山の天然若芽漁を見学(後編)
<前編はこちら>
もうもうと上がる湯気で、若芽(わかめ)漁師、舘野さんの姿が消える。
五右衛門風呂のような窯に入れられた若芽は
100度の熱湯の中で浸され数分の後、となりの冷水に入れられる。
「熱い熱い!、、、冷たい!」若芽の声が聞こえそうである。
何とも言えない透明感のある緑色に変わる時、それが嬉しい声だと思える。
山盛りの若芽が次から次へと引き上げられる。
もう、すでに美味しそうである。
真新しいすのこ台の上に拡げられたエメラルドグリーンの若芽は、
この後一晩潮風に干される。
2列に貼られたロープに、たくさんのピンチが下がっている。
若芽は茎の根の方から半分に割く。若芽一株に2つのピンチ。
三人がかりで丹念に留めていく。
20センチおきに約5メートルのロープが若芽でいっぱいになる。
広げられた若芽は、艶やかなドレスのようにフリフリを風になびかせ
浜で一夜を明かすのだ。潮風と陽光を浴びてさらに栄養価が増すだろう。
人の口に入るまで光合成を行っているかのよう。それが若芽なのだ。
そういえば、5月5日は「若芽の日」なのをご存知だろうか。
子供の日にかぶせて成長と健康を祈るという由来がある。
古く万葉集には海藻に因む和歌が百首以上ある。
若芽などやわらかい海藻のことは、「和布(にきめ)」として表現されている。
男性からの恋心を和布に喩えたロマンチックな和歌などもあり、興味深い。
折しも5月からの元号「令和」も、万葉の和歌からの典拠で、
どことなく繋がりを感じる。
また、若芽は豊作を祈願する神事にも深い関係を持ち、神聖で希少な象徴的存在だ。
食べるだけでなく、色々な方向から
古くから日本人になじみの深いものと言えるだろう。
この時期、葉山周辺の港は、一夜干しの若芽や昆布で黒い藤棚のような
風景が広がる。
収穫時期が限られることや、温暖化のための不漁から
天然の若芽をいただける機会は減少しているため、とても貴重だ。
海水温の高いことは若き漁師、舘野さんの心配のひとつでもある。
若芽料理というと、サラダ、酢の物、みそ汁などと並んで
竹の子との炊き合わせが春ならではのおすすめである。
海のレディーと山里の紳士の美味しい出会いは、この
時期にしか味わえないごちそうだ。
まだ日差しの柔らかい春先に葉山を訪れたら、
是非この天然若芽を味わっていただきたいものだ。
We Japanese are familier with Wakame seaweed from ancient era.
Yoshifumi.
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